【研究プロジェクト サマリー】
株式会社エレクトロスイスジャパン(兵庫県神戸市)、公益財団法人神戸国際医療交流財団(兵庫県神戸市)、株式会社情報システムエンジニアリング(東京都新宿区)、国立大学法人神戸大学(兵庫県神戸市)は海外にいる患者やケアを必要とする者の来日受け入れ(以下、国際患者対応という)に向けたコミュニケ―ション支援にフォーカスした新たなシステムを開発した。
本システムは、国際患者対応従事者のノウハウを学習したAIを利用して、来日候補者とのコミュニケーションエラーや確認事項の漏れ、結果として満足度の低下につながる不確実性を回避するナッジ情報をシステム使用者に提供することを特色としており、国際間コミュニケーションを想定し多言語対応(現状では韓国語と中国語)の機能を備えている。
また本システムの開発には兵庫県が実施する次世代産業を中心とした成長産業分野の育成を図るための研究補助制度「兵庫県成長産業育成のための研究開発支援事業」を活用したものである。
【システムの内容】
現地患者-国際患者対応窓口間のコミュニケーションを支援するためのICT基盤は次のような提供価値を備えたシステムとして具現化した。
・合意形成の過程および結果をリアルタイム共有できるUIデザイン
・リアルタイム翻訳に対応したチャット機能
・チャットメッセージで生じる不確実性を回避するための常時監視AI+リコメンド
・条件に合致する病院候補の提示
・その時々の状況に基づく不確実性の有無をAIにより確認
・ウェアラブル機器へのレコメンド表示の可能性
- 本システムは、株式会社情報システムエンジニアリングの保有特許に基づく独自技術worktransform®を採用している。
worktransform®紹介ページ
https://ise.co.jp/business/worktransform/
worktransformは株式会社情報システムエンジニアリングの登録商標です。
【今後の展開】
実運用を試験的に開始することを予定しており、これまで実際に国際患者を紹介いただいている韓国の病院からの新たな患者紹介時に本システムを試験導入して、必要な学習データおよび機能実装の改善を行う。実運用を試験的に行ったのち、事業ビジネスモデルとして展開していく。
【地域的波及効果】
本システムを実際の国際患者対応業務への導入を行い、患者紹介を受けたい病院については兵庫県内の病院に優先的に参加を働きかけ、兵庫県を中心にビジネスモデル(兵庫モデル)を確立する。
並行して患者を送りだす国または地域を増やし、将来的には兵庫モデルを全国へ展開していく。また、ICT基盤のベースとなる部分は汎用性があるため、類似のコミュニケーションニーズのある業界への適用も可能である。全国モデルへの展開により地域社会・経済発展への寄与を目指す。
このシステムの開発の契機となったのは、国が推進してきた医療ツーリズム戦略で、2017年に神戸市と国立大学法人神戸大学は、同医学部キャンパスに外国人患者と病院をつなぐ国際医療専門部署「インターナショナル・メディカル・コミュニケーションセンター(IMCC)」を開設しており、2018年には神戸大学医学部附属病院国際がん医療・研究センター(ICCRC)には、実際に相談を受け付ける専用デスクを設けた。患者を受入れることで見えてきた課題が、病状確認や治療方針の確認が曖昧なまま来日することで起こる患者と病院のミスマッチであり「希望する治療ができる病状ではなかった」「医療制度の違いから医療費が想定外であった」などにより希望する治療が受けられなかった患者も多くいた。これらの課題を解決するために本システムを開発した。