公益財団法人神戸国際医療交流財団(本社:兵庫県神戸市中央区港島南町1-6-4、以下、神戸国際医療交流財団)は、2018年6月18日に、カンボジア産婦人科学会へ顕微鏡を5台贈呈致しました。
カンボジアでは、今まで妊娠出産で命を落とす女性を減らすために、国を挙げて様々な努力をしてきました。その成果あって妊娠出産で命を落とす女性は激減しましたが、逆に子宮頚がんで亡くなる女性の数は妊娠出産で命を落とす女性より数が多く(年間推定約800人)なってしまいました。子宮頚がんは主にパピローマウイルス感染によって起きるため、ワクチンによる予防も可能ですし、日本のような先進国では早期診断できれば命を落とすことは少ないです。また、カンボジアでは子宮頚がんの治療として、手術以外の放射線治療や化学療法といった選択肢も少なく、早期診断できなければ治療手段もなくなってしまいます。
日本産科婦人科学会は2015年10月よりカンボジア産婦人科学会に協力して、カンボジアの工場で働く女性の健康向上のために、健康教育・子宮頚がん検診を行うというプロジェクトを開始し、神戸国際医療交流財団の松本安代フェローがプロジェクトマネージメントチームの一員として活動してきました。
子宮頚がん検診を実施しても、二次検診(精密検査)は病理診断となり、産婦人科医のみならず病理医の能力の向上が必須であることから、2017年10月~11月にカンボジアの現役病理医4名と病理技師4名を厚労省の国際展開事業費で日本に招聘して日本の病理診断、病理教育システム等を学ぶ研修が実施され、松本フェローが研修実施に関わりました。また2017年より日本臨床細胞学会も5年間の予定で年2回のカンボジア人医師の招聘を決めています。ただ、学会参加以上の研修機会はなく、さらに帰国後各病院で若手病理研修医や病理技師の教育の為に必要な顕微鏡が不足しています。カンボジアの病理人材育成のためには継続した教育機会と必要最低限の器材が必要です。
今回、神戸国際医療交流財団は、東京医科歯科大学で不要となった中古顕微鏡を5台譲り受け、カンボジアの若手病理研修医や病理技師の教育の為に使えるようにメンテナンスを行った上で輸送し、病理検査を行っている国立4病院と1大学に贈呈しました。6月18日に行われた顕微鏡贈呈式には神戸国際医療交流財団の後藤章暢代表理事と松本安代フェローが出席し、神戸国際医療交流財団に対してカンボジア産婦人科学会より感謝状が渡されました。
現在、日本臨床細胞学会がカンボジア人産婦人科医と病理医の招聘し、研修を行っており、神戸国際医療交流財団としても学会出席後の研修機会の確保と、カンボジア国内の医療水準の向上を目的として、学会前後1週間程度の病院研修を予定しています。